大切にしてきたこと、していること
アトリエには多くの方々が訪れる。
この場所さえ良ければ、とは僕は考えていない。
寧ろこの場所は多くの人にとってきっかけになる。
人の心に直接届けたい、という思いでやってきた。
人とお会いすることを、何より大切にしてきた。
アトリエの存在やそこで見たことを、その後の支えにして下さっている方々もいる。
心底疲れ果てて、何の希望も無い状態で来た人達。
決死の思いで辿り着いた場所であったりもする。
他の場所を渡り歩いても、何処にも希望が感じられなかったと言う方々もいる。
そうでなくても様々な不安を抱えて、この場所に何かを感じて来てくれる人達。
特に、ダウン症を持つお子さんのいる方とは、なるべく時間を作ってお会いしてきた。僕が一人で対応出来ることは少ない。それでも専門家はまるで役に立たないことしか言っていないと、思い知らされている。微力ながら、せめてここへ来る人達だけでも、少しは役に立つことをお伝えしていこう、と。実際にお伝えした方向性が正しかったことは、その後の経過で証明されてきた。少なくとも保護者の方に自信と希望を持って頂かなければ何にもならない。
あの時、あんなふうに言ってくれた人は他に1人もいなかった、と後に語ってくれる人達がいる。
周りに惑わされて、子育てに確信が持てなくなっていた、と言う方もいる。お会いした方々から聞く限り、誤った知識を植え付ける流れは、これまでも、そして今でも続いているようだ。
正しい情報を選択し、子供と自分を信頼出来る日々を過ごして頂きたいと切に願う。
偶然、嬉しくなる記事を読んだ。
日本財団発行の子供とアートと言う特集の中の一つの記事で、かつて世田谷のアトリエでお話した堀江直子さんが登場していた。インタビューの中で堀江さんがお子さんが絵を描くきっかけとして、アトリエへの見学があったと仰っていて、本当に良かったなあ、と感慨深い。作品と、絵を通して対話が行われる、素敵な環境。お母さんの眼差し。こんな風に、一人でも多くの家庭が暖かな場となってくれたなら、どんなに素晴らしいことだろう。一人の人間の中にある可能性を信頼して、向き合い、育てて行ける環境。
一人一人の幸せに繋がってこそだと思っている。
アトリエも、制作のの場も、作品も、そのためのきっかけとして存在している。