輝く瞬間
志摩アトリエへ、毎年恒例の沖縄からのお客様。僕は昨年1度だけ制作の場を共にした。
素敵なご家族です。
ダウン症を持つ男の子が毎年制作に来てくれる。筆がなかなか動かないケースで、昨年はよしこから、ここは佐久間の出番と頼まれて、制作に入り、結果はとても良く、素晴らしい作品を見ることが出来た。
そんな訳で今年も。
絵を描けば良いとか、作品が生まれれば良いとは必ずしも思っていない。
それに、作品はその時だけの結果ではない。
その時間だけで辻褄を合わせるようなことではない。最上の時間であってもあくまできっかけだと思っている。
それでも、作品には作家の心が、魂が宿るもの。生きた証とさえ言えるもの。幸せな瞬間が記録される。
せっかく出会って、一緒にいるのだから、この瞬間が輝いて、心に刻まれるような場を、一緒に生きたい。
よしこはご飯を作ったりと気持ちを込めて、愛情を込めてご家族と作家をお迎えした。
志摩アトリエの穏やかな環境に包まれ、最高の制作が出来た。
場に入って、作家と向き合えば、響き合うことが出来る。作家が何を感じているのか、何処へ行きたいのか、何に遮られているのか、その心の動きを曇り無く感じることが出来る。さあ、そろそろ行けるね、一緒に行こう。やっぱり凄いね、素晴らしいね、見せてくれてありがとう。こんな流れが自然に待っている。ただ相手の心に波長を合わせて、感じ合うことさえ出来れば。それは難しくはない。僕にとっては、何時でもずっと続けてきたことだから。誰のことも裏切らず、誰にも裏切られることなく。信頼し合えたから。16の頃、この世界と出会ってからずっとそうしてきたから。1度だって疑ったことはない。一人の人間の持つ自発的創造性の力を。
彼の優しさ、敏感さ、柔らかさ、筆の動きの中に、生命のリズムが感じられる。色も線もその人そのもの。彼の良さが作品には全面に現れている。
生命の力が活き活きと動き出す場面、今日もとても感動的だった。