母川回帰

ダウン症の人たちのためのプライベートアトリエ、元アトリエ・エレマン・プレザン東京代表、佐久間寛厚のブログです。日々の制作の場で人間の心と創造性の源を見つめています。

子供たちに

志摩で地元の子ども達のアトリエを始めた。これからいっぱい来て欲しいな。まさかこんな感じで始めることになるとは、正直なところ思ってもみなかった。ダウンズタウンプロジェクトを進めて行くため、まだまだペースは分からないけれど、よし子が動ける体制をと考えてきた。子供達も居るから、理想は子育てしながら、この地で仕事すること。時間の問題やら色々、紆余曲折の末に、子どものアトリエを、と言う流れで。でも、ふと想うと、ずっとずっと、いつかは子どもと関わりたいと思っていた。若い頃には子供達の合宿とか色んな形で関わっていて、今の仕事のスタイルが確立してからは近くて遠い世界となっていた。子どもに関わる取材とか講演はやって来たけれど、似て非なるジャンルだから。だからいつかはもう1度子どもと関わる仕事をしたい、と言う想いはずっとあった。その昔、子ども達の合宿で見ていた頃、それぞれ複雑な問題を抱えて集まっていた子供達だったので、数日の間でもぶつかり合いやトラブルの連続で、それでもそうすることでしか、まだコミュニケーションすらとる方法を持たなかった子達が、寝食を共にして、一緒に働いて、夜空を見に行ったり、川の音を聴いているときに、良かった、こんな瞬間があって、と思えた。言葉に出来ない子は昼間消化できなかった想いを、夜行動で示したり。あるときは、寝ていると耳がざわざわして、起きて見ると虫が耳に入れられてて、こうやってしか不満を表せないのだな、って、また夜連れ出して話してみたり。これで変わるとか、変わったとか、将来とか、そう言うことではない。それよりこの今、少しでも自分の中で、楽しいとか、認められてるとか、嬉しいとか、そう言う気持ちを持って貰いたい、って。そう言う時間があったかなかったかで、違ってくるから。
結局、人は子どもの頃どんな風に過ごしていたのか、それで決まる。子どもの時間は誰しもに与えられているけれど、その時間は短い。そして、子どもが子どもとして過ごせる時間は、時代と共にどんどん少なくなっている。それは人間が育つためには危険な状況だと感じている。1度しかない、子どもの時代に、どんな時間を過ごすのか。そこで心に培われるべきは、人と世界への信頼感、自分と他人を愛せる感情。楽しい、心地良いを、肌で知ること。
僕自身も子供の頃はとても貧しく、毎日が安全とは言えない環境で育ったけれど、そこに何より仲間たちがいたこと、山や川や自然の近くに居たこと、沢山遊んだこと、祖母と出会えたこと、素敵な大人の背中を見られたこと、無数の景色、子供の時間で見てきた景色がどれほど支えになっているか知れない。どんなに困難を前にしても、この世界の豊かさ、生きていることの素晴らしさを疑ったことはない。それはあの子供時代があったからだと思っている。
悠太は相変わらず素敵な絵を描いた。これから沢山の子供達と出会えますように。

 


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