深みへ
今日のこの作品を見ながら、人間存在の奥深さを思わずにはいられない。
今よりももっと若い頃のゆうすけ君は、シンプルで明晰な絵を描いていた。
色も形も、2つか3つくらいしか使わずに、極めて簡素に描かれた作品は、もうそれで一つの完成形だった。こんなにシンプルに、こんなに綺麗に見える作品が創れるのか、と感動したもの。色も形も、コントラストと言うか、画面の中ではっきりと別れていて、それぞれのパーツが明るく響き合っていた。
そんな彼が、長い月日の中で、どんどんどんどんと深みを増して行く姿を見てきた。
その間に彼の人生にも色んな場面があり、辛いことも沢山あっだろう。
作品は奥へ奥へと潜って行くように深まって行った。色は混ざり合い、輪郭は消え入るギリギリのところで、辛うじて残っているが、限りなく背景と一体になっていく。
物と物との境界が消えて行くように。
自分と世界が一つに溶け合うように。
彼の精神性の高さを、この作品は示している。美とは何か。芸術とはなにか。人間とは、この世界とは何なのか。
その最も奥深い、存在の深淵を見つめるような作品。全ては溶け合い、一つの塊となってそこにある。何かしら、これはもう、形でも色でもなく、形や色を切っ掛けとして、それらを超えて、大いなるものの気配のように見えてしまう。
凄いなぁ。
作品をみていると、宇宙を前にしているような気になる。