母川回帰

ダウン症の人たちのためのプライベートアトリエ、元アトリエ・エレマン・プレザン東京代表、佐久間寛厚のブログです。日々の制作の場で人間の心と創造性の源を見つめています。

深みへ


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今日のこの作品を見ながら、人間存在の奥深さを思わずにはいられない。

 

今よりももっと若い頃のゆうすけ君は、シンプルで明晰な絵を描いていた。

色も形も、2つか3つくらいしか使わずに、極めて簡素に描かれた作品は、もうそれで一つの完成形だった。こんなにシンプルに、こんなに綺麗に見える作品が創れるのか、と感動したもの。色も形も、コントラストと言うか、画面の中ではっきりと別れていて、それぞれのパーツが明るく響き合っていた。

 

そんな彼が、長い月日の中で、どんどんどんどんと深みを増して行く姿を見てきた。

その間に彼の人生にも色んな場面があり、辛いことも沢山あっだろう。

作品は奥へ奥へと潜って行くように深まって行った。色は混ざり合い、輪郭は消え入るギリギリのところで、辛うじて残っているが、限りなく背景と一体になっていく。

 

物と物との境界が消えて行くように。

自分と世界が一つに溶け合うように。

 

彼の精神性の高さを、この作品は示している。美とは何か。芸術とはなにか。人間とは、この世界とは何なのか。

その最も奥深い、存在の深淵を見つめるような作品。全ては溶け合い、一つの塊となってそこにある。何かしら、これはもう、形でも色でもなく、形や色を切っ掛けとして、それらを超えて、大いなるものの気配のように見えてしまう。

 

凄いなぁ。

 

作品をみていると、宇宙を前にしているような気になる。