母川回帰

ダウン症の人たちのためのプライベートアトリエ、元アトリエ・エレマン・プレザン東京代表、佐久間寛厚のブログです。日々の制作の場で人間の心と創造性の源を見つめています。

許し合う力

今日は移動時間が長いので記事を多めに上げます。

名古屋でバスを降り、近鉄に乗りました。

 

トークのテーマでもあった「人はハッピーになる責任がある」と言うことば、難しい現場を前に、難しい人生を前にするほど、この気持ちを持って行くことが大切だな、と思う。ある意味で、生きる覚悟ですね。

 

人は人に影響を与える存在。

居るだけでも影響を与えるし、与え合っている存在。

だからこそ、人が生きることで出来る最大のことは、人に良い影響を与えること。

 

この前も書きましたが、過ぎてしまった時間はもうしょうがないです。

日々の積み重ねを、甘く見ないことが何より大切です。僕が見て来た中でも数名の作家は取り返しのつかないほど、心に傷を負ってしまっています。

こうなる前に、何度も何度も、僕は注意を促して来ています。出来ないことばかりでは無かったはずです。

声をかけてはっとする保護者の方も多いです。

何故分かったのですか、と驚く方もいます。

 

ことを重く見ない方もいます。

「無理させてはいない」「この子は大丈夫です」と。

でも僕は今目の前で起きている事実を語っているのです。絵は、制作は嘘をつきません。その人の心が直に伝わって来ます。こちらは全力で向き合っています。

どうかご家庭でも日々の中でくみ取ってあげて下さい。そのことが将来、その人をどれだけ助けてくれることか。

 

環境と日々見ている世界。

それがその人の無意識となって行きます。

その無意識がどんな景色で出来ているのか、それがその人を決定づけます。このことは一般の人達も同じ。

良いものも悪いものも、時間をかけてその人の元へ入り、その人を動機付け、その人を作って行きます。

この話はまたトークの際に。

 

最近も色んな話題が耳に入って来ます。

確かに社会の不寛容、理解のなさ、偏見、と言ったものは大きな問題です。戦う必要は確実にあります。

でも権利だけ主張してても変わりません。

 

自ら働きかけ、良い影響を残して行くことが大切です。昔、まだこの仕事をする前のことです。障害を持つ人達とは友達のように、と言うよりは完全に友達として付き合っていました。今とは違って一緒に色んなことをしたし、色んな場所に出掛けて行きましたね。

公共の場所とか、ここは多分難しいかも、と言う場所へもあえて行きました。障害を持つ人といると、差別的な目で見られたり、うるさい、と言われたり、出ていけ、と言わんばかりの眼差しを送られることも多くありました。そんな時、僕は良くその人達に話しかけたり、笑わせたり、障害のある人と上手く接触させたりしました。偏見に満ちた人ほど心を開くと優しかったです。関わる人間のこうした繋ぐ工夫によって、一般の人達との接触の仕方も変わります。

 

ただ偏見を持つ人間が悪い、と言って受け入れて貰う権利があるのだから、と言って、相手を攻撃しているだけでは何も変わりません。

人がマイナスなものを発しているなら、こちらは少しでもプラスなものを出して、それだけでは変えられなくても、一歩でも笑い合える状況を、僕は創りたいと思っていました。

それはこの仕事を始めてからも、ずっと同じです。

人は本来、本能的には繋がろうと、笑おうとしているのです。


f:id:skmskm77:20190624143511j:image