母川回帰

ダウン症の人たちのためのプライベートアトリエ、元アトリエ・エレマン・プレザン東京代表、佐久間寛厚のブログです。日々の制作の場で人間の心と創造性の源を見つめています。

残して行くもの

土曜日の制作。

後半でとんでもなく集中した、濃密な時間が。心の奥にある創造性と言うのは、本当に本当に凄いもの。

 

制作の時間と、人間の心、一つになる場。

未だに未知であり、神秘であり続ける。

 

こう言う時間は、一人一人の奥深くに刻まれ、残って行く。

本当に人にあげられるもの、残せるものは何かと言ったら、そう言う景色だ。

一緒にその景色を見ること。

その記憶は人が生きる力となる。

 

先日のベジぼんさんでのこと、母川回帰シリーズも6回目となって、ほぼ毎回来て下さっている方々が並んで座っているのを見て、皆さんの表情の明らかな変化を実感した。

安心感や、自信や、わくわく感、そして、前を向いている姿が素晴らしかった。

テーマにも掲げている、一人一人が幸せになって行くこと、きっと実現させたい。

 

会が終わって、夜道を歩いて帰ろうか、と稲垣君と話していると、ベジぼんの井上さんも、少しと言って送って下さった。

いつの間にかかなり長距離ご一緒して下さることに。夜のお散歩。

僕らは3人で子供のように、仲良しの友達みたいに歩いた。

幸せな時間だった。

井上さんがお父様との想い出として、子供の頃、良く一緒に散歩してアイスクリームを買って貰ったこと、その何気ない時間が今でも記憶に残っていること、今も一緒に散歩しているような気持ちになること、いや、今でも一緒に散歩することが出来ると言うこと、例え隣にお父様が居なくても、そんな話をして下さった。

それは母川回帰シリーズのテーマそのもののようなエピソードだった。

暖かい気持ちになった。

 

今と言うかけがえの無い時間に、僕らは何をすべきなのか、。

目の前の人、そこにあるもの、風景や時間、大好きなこの世界。

大好きなこの場所や人達に、きっと大切なものを残して行くことが出来る。

今を深く一緒に経験することで。

そこに居た人も、そこにあったものたちも、無くなることはない。時と共に姿を変えても、そこにあったもの、そこに居た人達は更に鮮やかに、より深く存在していることだろう。

この今を大切に愛おしみ、慈しむように、接して行けるなら。そして、共感と共有が出来るなら。

 

僕がずっと昔から場と呼んでいるのは、そのように自覚された時間のこと。

 

だから本当はこの世界中が場である、と言うことも出来る。

 

僕の中には無限の時間と空間と、数限りない人達の人生が、今でも生きて存在している。

無数の景色が、僕を生かし、動かしている。

居る人も、もう居なくなった人達も、みんな一緒に、これからも歩き続ける。

 

いつでも美しいものを見つけることが出来る。そして、その美しいものを、みんなと一緒にみたい。美味しいものを、一緒に食べたい。素晴らしい場を、作品をみんなと共有したい。これからも。


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