母川回帰

ダウン症の人たちのためのプライベートアトリエ、元アトリエ・エレマン・プレザン東京代表、佐久間寛厚のブログです。日々の制作の場で人間の心と創造性の源を見つめています。

相手に敬意を払うこと

ずっと前から問題を指摘してきた。

最近も目に余るものがある。

障害者アート的なものや、福祉をアートやデザインや企画と結びつけることで、社会との架け橋となろう、と言う多くの活動が、その為には何でもコンテンツにすると言う、乱暴さ、強引さが目立ってきている。

こう言った流れを僕が止めることは出来ない。ただ注意を促すことくらいのことしか。もう少し繊細な配慮と想像力をもってやった方が良い。誰もちゃんと言わないので少しだけ書く。

 

本気で多様性を考え、個々の在り方を尊重しようと思うなら、そっとしておいてあげることの大切さも知るべきだ。誰もが一緒になりたいとか、同じ土壌に乗りたいとか、触れ合いたいと思っているわけではない。やってあげると言う驕りを捨て、それぞれの世界をまず感じてみること。


1人の人間の内面にある世界は見世物ではない。本物の信頼関係があって初めて、何かと繋ぐことが出来る。繋ぐ必要があるのか、繋ぐことで何が変わるのか、そのことのプラスとマイナスは何か、しっかりとした洞察が必要だ。

相手に対してのリスクには絶えず自覚がなければならない。
その結果どうなるのか、先に想像力を持たなければ、扱えない領域がある。

 

福祉や平等と言う言葉で議論されるとき、距離や壁は無くすべきものとばかり捉えられるが、それは違っている。必要な距離や壁と不必要なそれとがある。生態系を守るための距離や壁は取り去ってはならない。それは尊厳に関わることだ。礼儀でもある。

こちら側から作った偏見と言う壁は壊すべきだろう。だが、相手側が身を守るために作っている壁だってありえる。

安易に立ち入ってはならない領域もある。

謙虚であること、相手に敬意を払うこと、何よりもそれを大切に出来なければ、内面の対話など不可能に決まっている。

交わる人も交わらない人も、存在していくことが出来ること、それが多様性だ。繋がると言うことをこちらが一方的に作り上げた土壌に乗せることで実現してはいないか、今一度見直してみるべきだ。