母川回帰

ダウン症の人たちのためのプライベートアトリエ、元アトリエ・エレマン・プレザン東京代表、佐久間寛厚のブログです。日々の制作の場で人間の心と創造性の源を見つめています。

たった一人のその人を見る

先日の対話の中でも出て来たことだけど、今度のお話は個性をテーマに選ぼうかな、と考えている。個性を尊重するとか言う議論で実は扱えないものこそ本当の個性だから。今それを本気で語ることはとても大切だと思っている。ここで先回りして書くことはしないけど、社会的な動きとして言葉だけが一人歩きしている多様性とか、ダイバーシティとか、まあ、色々あるんだけど、例えば、今この瞬間にたった一人の個性がどこまで大切に扱われているのか、そこだけがバロメーターだと考えている。僕が現場に入って人の心と向き合うと言う実践を続けてもう30年近くになる。佐久間さんの経験値が来る人の心を解すと言ってくれる方もいるけど、これは違う。僕は経験で人を見ることはしない。人の心ほど、一般化や普遍化から程遠いものはない。こう言う場合こうですよね、って言うのがまず無いから。社会は枠組みを作らなければ成立しないけれど、必ずその枠組みから洩れる人が出て来る。これは必然。僕らはいつでも目の前にいるたった一人の人から、そのかけがえのない個性から始めなければならない。関わると言うことは、関わる側にとっても個性的なこと。たった一人の人がありのままにあれるなら、それは多くの個性が活かされることに繋がる。多様性は外にあるだけではない。自らの内面にある多様性を認め、活かせた時にこそ、真の広がりが生まれる。僕が現場に立つ時、その人を見る。その人だけを見る。そして、何をどうしようとする前に、まず全身全霊で相手を感じようとする。全てはそこから始まる。たった一人のかけがえのない存在。それは向き合う自らにも向けられる眼差しとなる。心と心が響き合う世界へ。


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