失われた春と過ぎて行く夏
猛暑が続いたこの夏も、何だか終わりの気配がしてきた。夜風は心地良く、波の音が聴こえてくる。虫たちの声も。2020年は季節感が失われたけれど、特に春は一体何処へ行ってしまったのか。コロナのアレコレからも遙かに遠くに居て、自らの内面を彷徨っていた作家がいる。ほんの少しだけ落ち着いて来ている。ここ最近も電話でよく話す。1番しんどかった時期に、丁度夏になった頃だろうか。電話が掛かってきて、出ると声の向こうから森山直太朗のさくらが大きな音量で鳴っていた。コロナや社会の動きからさえ無縁のような場所で、でも彼は何処かへ行ってしまった春を追いかけていた。
自粛ムードが続いた東京で桜を見たのは僅かだったけれど、志摩では早くに咲く桜があったので、一足先に春を感じていた。もう遠い昔の出来事のようだ。
そして、2020年の夏ももうすぐ終わる。