母川回帰

ダウン症の人たちのためのプライベートアトリエ、元アトリエ・エレマン・プレザン東京代表、佐久間寛厚のブログです。日々の制作の場で人間の心と創造性の源を見つめています。

創造性

この場所ではみんな本領を発揮してくれていたから、全ての作品が素晴らしかった。綺麗だった。でも特に覚えている作品はやっぱりその人のポテンシャルがグッと浮かび上がってきた瞬間に生まれたもの。その人が出た瞬間。ここ数年で参加してくれた数名の作家に関してはもう少し時間があれば、もう少し関われたら、と言う思いもある。もう1歩でと言う思いも。それでも一人一人が自分に帰る時間を経験してくれたことは確か。それから、やっぱりとても綺麗だと感じる作品はその作家にとってのスタンダードなもの。今日のは違うなあと言うものより、いつも描き続けているものに、やっぱりその人の良さが出ている。

 

この作品も思い出深い。本人のいるご家族の元へお戻しする作品なのでここで最後に上げておこう。ゆりちゃんにとっては変わる切っ掛けになった作品。本人はとてもしんどい時期だった。なかなか抜け出せない中にあって、ある日、あ、今日は行けそうだな、と感じた。筆は止まらなくなっていた。保護者の方にお話ししてご協力頂いて、長い時間お待ち頂いた。外は真っ暗になっていた。たった一人アトリエに残って、いつまでも制作を続けていた。終われないかな、と感じる瞬間もあったけど、目を見て、大丈夫だと思った。そうやって仕上げた作品。それ以降は制作にそんなに時間をかけることは1度もなかった。


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