母川回帰

ダウン症の人たちのためのプライベートアトリエ、元アトリエ・エレマン・プレザン東京代表、佐久間寛厚のブログです。日々の制作の場で人間の心と創造性の源を見つめています。

クリスマスカード

こう言う話はもう良いかな、とも思うし、僕の役割でもない。
まあ、でもちょっとだけ分かり易いお話を。先日とある作業所で作られたラグマットを頂いたけれど、よくある普通の感じで、なんだか残念だった。多分、指導を受けて、作っている人の意思とか感性が出ていないのだろう。そんなことをぼんやりと思ったのは、ここに素敵なラグマットがあるからで、これは信州共働学舎のくにちゃん作。全て本人の動機で創られている。このシリーズは一時期くにちゃんが夢中になって創っていて、他のも全部素敵だった。買い集めておけば良かったな、と今は思っている。共働学舎からは毎年クリスマスカードが届くけれど、ちょっとだけそのことを。あれはシルクスクリーンでトレースしているけれど、その際には描いた本人ではない人が線をなぞって版を作る。僕も昔やっていた。共働学舎は僕にとっての元イメージだし、多くのインスピレーションを貰っている。でも、学舎においてすら、普段の生活や仕事では、お世話する、指導すると言うスタイルが基本だった。一人一人の持つ本来の力が尊重され、活かされてはいなかった。そんな中での冬作業のクリスマスカードや、工芸や陶芸の意味は大きかった。そこでは一人一人の個性が発揮できる場面があったから。クリスマスカードの絵の線をなぞるとき、なるべく、なるべく、本人の性質や癖を残すように、と、綺麗な線に変えてしまわないようにと、Mさんは言っていた。普段はそんな考えはなかなか見えない方だったけど、これこそが学舎なんだ、と感じたもの。原画をそのままコピーしたり、他の方法もありそうだけど、なぞると言う在り方も学舎的なのでは、と思う。僕はその頃、生活の全てで一人一人の心をなぞろうとしていた。その先に何かがきっと見えて来ると感じていた。心をなぞる、その先にある世界については、その後、随分語ることになりましたね。さて、この先はどうなることでしょうか。

 


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