母川回帰

ダウン症の人たちのためのプライベートアトリエ、元アトリエ・エレマン・プレザン東京代表、佐久間寛厚のブログです。日々の制作の場で人間の心と創造性の源を見つめています。

センサーを動かせ

フランスでの保育園の記事を見た。

再開したが感染症予防としてとられている対策が酷かった。子供は四角に引かれた線の中に入って、そこから他の子や大人と接している。見ただけで分かる。これはやってはならないことだ。止めた方が良い。

子供の心に世界との断絶と、他への不信が、無意識のうちに残る。

 

ここまで来てしまったのか、と珍しく暗い気持ちになった。コロナは終わる。例え次の波が来ても、それもまた終わって行く。

しかし、その後の世界はどうなってしまうのか。取り返しのつかないことが進んでいる。

それ程でなくとも、無自覚のまま沢山のダメージを人の心に残して行くことは確実だ。

 

保育の専門家の方と、本当に久しぶりにお話する機会があった。

やはり同じ用なことを感じ、考えているなぁ、と思った。

 

改めて、何が大切なのか、守るべきは何なのか、考えた方が良い。

 

これまでの価値観を変える必要がある、と説く人達も多い。

そうだろうか。本当に考え抜いて、大切にしていた価値観ならば、僕は寧ろ変えるべきではない、と思う。

こう言う状況で変えなければならなかった、考えや価値観なら、それ以前、どんな風に考えていたのだろう。大切なことはこれからもっと大切になるはずだ。

今こそ、もっと大切にすべきとき。

 

もし、人が対面出来ない、身体接触を持てない、そうなったら、残念だけど、もう僕には現場での仕事はない。そんな簡単なものではない。物理的にはやれるだろう。だけど、やれることと、やるべきことは違う。

やるべきことが出来ないなら、それは繰り返すけれど、とても残念だけど止めるしかない。いや、やるべきではない、と言った方が良いだろう。相手を前にして、四角に囲った線から出るな、などと僕は絶対に言わない。

 

危機感を強く感じているけれど、今は何も出来ない。ただ、ここは良く見ておく必要がある。この世界は一体どうなってしまうのか。

 

1月の時点から僕は言い続けた。

もし人が恐れに支配され、状況を見誤ればコロナよりも遙かに恐ろしいものがやってくると。冷静さを失い、排他的になった時、収拾のつかない事態がやってくる。

これも残念ながら食い止めることは出来なかった。心理的な恐怖心は取り返しのつかない状況を作り出してしまった。

僕が言いたいのは経済のことではない。

もちろん、経済も無視は出来ないけれど。

それ以上に多くのものが、気づかれないうちに失われてしまった。そして、人の心が身体感覚として、この世界への信頼を取り戻すには、それなりの手順を踏まなければならない。時間を掛けて作られたものは、時間を掛けてしか取り戻せない。

まだ多くの人はそのことに無自覚なままだ。

 

さて、これから、僕らはどうすべきなのか。

またしても時間の掛かる仕事がまっている。

まずは場に立って、肌で感じて、次の形を判断しなければならない。

 

どうなるか分からないし、これまでと同じ仕事が続けられるかどうかは分からない。

それでも何かを見つけて、何処かから取り組んで行くしかない。

 

やるしかないだろう。